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リハビリで軽く一本。孤高組スマブラXネタだった筈なのに似非シリアス風味で終わりました。
「そう言えば」
薬缶から急須に熱湯を注ぎ足し、田中は思い出したように顔を上げた。
「今年中開催予定だったあの大会って、延期になっていたんでしたっけ?」
並べた湯飲みに、慣れた手付きで茶を入れながら続ける。淡い緑が流れ込むと、湯気と共に爽やかな青い芳香が立ち上る。順番に注がれ少しずつ嵩を増していく茶の水面は、二巡目と三巡目の湯飲みとではそれぞれ測ったようにぴったり同じ高さになっていた。
「ああ、あれな。いつの間にか来年頭ってことになってたけど」
先に自分の湯飲みを取った鈴木が、熱さに顔を顰める。紛らわすためか、雨宮が分けている最中の茶請けに伸びた手を窘めながら、斉藤が受けて続いた。
「かなり大規模なバトルロイヤル形式らしいから、運営側は延期してでもクオリティを保ちたいようだぞ。確かに音響関係一つ取ってみても、相当な有名処が名を連ねてたしな」
「だったら、正に俺達の見せ場じゃねえか」
団子を頬張りながら楽しげに身を乗り出す鈴木の前に、沙耶花が茶請けを一つ減らして載せた皿を置いた。他の皿に伸びた手を、一瞥すらせず華麗に払う。以前人数分を揃いで貰った静山窯の菓子皿に残りの吉備団子を均等に分けると、沙耶花は小首を傾げるように思案げな表情を浮かべた。
「そうね。でも、どうなの? リーダー」
視線を向けた沙耶花に釣られるように、他の面々も反射的に窓の傍の席を見た。テーブルの最奥、今は空席の団長の席の隣に、リーダー部の長は腕組みの格好で腰掛けている。振り返り、一本木は徐に口を開いた。それまで黙ったまま日の当たる窓の外を見ていたようだったが、皆の話は聞いていたらしい。
「応援団としての出場要請は来ていない」
「あ。やっぱり、そうなんだ」
「何だよ。つまらねえな」
「それでは、今回は自分達の出番は全く無いと言うことなんでしょうか」
急須の蓋に手を添えたまま何の気無しに相槌を打ち、数秒もしない内に、田中は自らの不心得に気付いて身を固くした。弾かれたように顔を上げると、案の定、険を帯びた墨色の視線が無言で田中を見据えていた。
「田中」
追い討ちのように、一本木が短く呼ぶ。田中は急須を持ったまま、素早く背筋を正した。
「し……失礼致しました! 予め要請が無くとも、選手の皆さんに必要とされたなら夕日町応援団としていつでも駆け付ける所存です!」
「まあ、団長がこの場にいらしたら、そういう心構えでいろと仰るだろうな」
精一杯胸を張りつつも表情が強張る後輩を慰めるように、斉藤が苦笑いで続ける。判って言っていたのだろう、一本木が従容と頷く。それを見て漸く、田中の肩からゆるゆると力が抜けていった。鈴木が椅子に背を預け、思い切り伸びをした。
「って言っても実際のところ、俺達の出る幕あるかって話だけどな。今発表になってるだけでも、応援というかサポート役に当たる奴がかなり居るみたいだし」
「何だ。西園寺達は出るのか?」
「いや、そういう話も聞いてない。見たところ、とても応援団って感じの面子じゃないんだが……」
言葉尻を濁す鈴木に、平静を取り戻した田中が補足した。
「選手の方々も、世界各国各地から人種も職業も問わず様々に集められているらしいですね。自分が調べてみた資料だと、選考基準はただ、『代表』と呼べる資格があるか否かだそうです。その条件が満たされていれば、戦闘力自体は高くなくても良いみたいです」
「その基準自体、良く判らねえな」
「何でも、職業・勇者って人も居るそうですよ。配管工や登山家も見ました」
「何だそりゃ」
「勇者なら」
熱いものを淹れ直された湯呑みを片手に、一本木は揺れる淡緑に目を落とした。
「夕日町にも、岡山さんが居る」
「いや、一本木。それは、そうなんだが」
それは多分、もっと違う別のものだ。逡巡の結果茶と一緒に飲み込まれただろう斉藤の台詞を、田中は頭の中だけで続ける。
成程、そんな混沌とした大舞台に物怖じもせず、自らを保ち飲まれることなく独りで立てる存在の強さがあるとしたら、それは確かに選ばれるに相応しい格だろう。もしもここからそこへ呼ばれる資格が誰かにあるとしたら、それを満たせる者はきっと一人しかいない。漠然とした思いを口にはせずに、田中は淹れ立ての熱い茶を平然と啜る横顔を眺めながら、日溜まりの目映さに目を細めた。
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試験期間中からこっちずっと、スマブラXに応援団が出たらイイナ!というのは諸方面で耳にし目にしかく言う私も考えていたんですが、遅ればせながら何のひねりもなくネタにしてみます。プレイ回数重ねてったらアシストフィギュアで出るとイイナ!
にしても暫くぶりに書いてみたら、文の書き方忘れてるのか応援団が難しいこと忘れてたのか、妙に書きにくくて短い割に時間掛かりました……。リハビリリハビリ。
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