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途中で止めてる話があるのに恐縮ですが思い立って勢いで出来たのでつい。
斉藤のための習作、というか何も考えずに読み流せる(寧ろそうしていただきたい)ユルめの斉藤・一本木・西園寺話です。




 



 いい傾向に変わっている、と斉藤篤は思う。太陽の命運を懸けたあの日以来、朝日町夕日町双方の交流が少しずつ増えて来ていた。すっかり意気投合した雨宮と白咲はよく一緒に遊びに行っているらしいし、菊地も時々田中に勉強を教わりに行っているようだった。これから双方の団の将来を担っていく新しい力が、互いに切磋琢磨し合いながらも仲良く心を通わせる様子は傍から見ていても微笑ましい。
 だがしかし。それなら今日のこの場も、そんな交流の一環なのだろうか。それにしては些か、と斉藤は傍らに座る一本木をちらと横目で窺った。精悍な横顔はカウンターの上で両手の指を組んで、いつもと同じように沈黙を保っている。普段であればそんな態度は別段苦ではなく、一種心地良い位の間ですらあるのだが、今日に限っては話が別だった。
 斉藤のその思いは、一本木の更に隣に座る西園寺にもきっと通じる心境だったに違いない。眉間に皺を寄せ、先刻から頻りに何かを考え込んでいるようだった。練習帰りに偶々川の対岸を歩いていたところを一本木が見付けて連れて来たのだが、清潔だが昔ながらの「町の中華料理店」の内装はどうにも西園寺の容姿には不似合いで、朱赤の椅子に掛けて長い足を組む居住まいにも激しい違和感がある。斉藤自身、元々一本木と練習後の食事に行く約束をしていたこともあり、また無口なリーダーが自ら人を誘うこと自体相当に珍しかったのでつい好奇心に負けて付いて来てしまったが、今は正直なところ遠慮するべきだったと心の底から思う。
 要するに、気まずい。一本木も何故よりによってここを、と問い質したかった。間を持たせる会話を彼に期待するなどどだい無理な話なのは承知しているが、お陰でいつもなら練習後の疲れた身体に染みるような濃厚なスープの匂いも、今日は落ち着かなさを助長させるに過ぎない。
「……。一本木」
 沈黙に最初に耐え切れなくなったのは西園寺だった。
「すまない。ここまで来ておいて悪いが、やはり俺は帰らせて貰う」
「西園寺」
 制するような短い声だった。引き止める声音に、朱赤の丸椅子から下りかけていた西園寺が怪訝そうに眉を寄せる。
 と、不意にその革靴の足元で、みゃあと小さく鳴く声が聞こえた。何故か西園寺がはっとした顔で視線を落とすと、いつのまに寄って来ていたのか、オレンジ色の毛並みの猫が前足を揃えて座り込み、三人を見上げていた。見上げる愛嬌のある顔には、斉藤も覚えがあった。店で飼われているわけではないが、どういう訳か縁起がいいのだと店主が可愛がっている猫だった。驚いたような西園寺の表情に、ふとある雨の日の記憶が過ぎり、斉藤は漸く一本木の意図を読んだ。
「お前は……。そうか」
 西園寺の小さな呟きに答えるように、再び鳴いた猫の首の鈴がちりんと鳴る。椅子に座り直した西園寺の眉間からは、先刻までの険しい皺が消えていた。いいタイミングと見計らい、斉藤は品書きを開いた。
「西園寺は」
「同じものでいい」
「じゃ、おやっさん。いつもの三つ」
 斉藤が注文を纏め、漸くほっとした気持ちでカウンターに向かう。やがて出てきた三つの丼は大盛の麺とスープで満たされていて、脂と味噌が溶け合う香気が温かく立ち上っていた。一本木のように長い髪を結い上げているわけではない西園寺は少し食べにくそうだったが、蓮華で一口スープを含むと、意外そうな表情で呟いた。
「悪くない」
 反射故に正直な筈のその感想に、一本木が心なしか柔らかな表情を浮かべたのを斉藤は見た。今日は珍しいものを幾つも眼にしたのだと気付き、ふと新鮮な気持ちになる。いつもは鈴木や田中と一緒に過ごす場所だったが、確かにこんな光景も悪くない。初めはどうなることかと思ったが、成程、偶にはこういう機会があってもいいのかも知れない。
「ところで、一本木」
 器の雷文もくっきり見えるほど綺麗に食べ終わり、西園寺が品の良い所作で口の端をハンカチで拭いながら切り出した。一本木も既に器を空にしている。何となくこの時間を惜しむような気持ちで、斉藤も器の底に残った最後の麺を掬って口に運んだ時だった。
「これは何という料理なんだ?」
 真顔の疑問に最後の一口を噴きそうになる。気管にスープが入って激しく噎せる斉藤の傍らで、一本木が無言のまま箸を揃えてテーブルに置いた。かたり、と乾いた音がやけに響いた。
「……帰ったら」
 神妙な表情で、一本木は徐に口を開いた。
「菊地か森山に、ラーメンとは何だと聞いてみるといい」
 直接答えなかったのは思いやりだろうか。あと杉田の名前が出なかったのは本能だろうか。感じ入った様子の西園寺の横で、一本木がこっくりと頷く。
「成程。これがそうか」
「そうだ」
(ボケが二人だと話が進まんな……)
 こんな相手の脇についているなら、森山辺りとは意外に話が合うかも知れない。機会があれば今度誘ってみよう。そう密かに誓いながら、斉藤は噎せるあまりに滲んだ涙を眼帯の下でそっと拭った。

 


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ラーメンへのリアクションは天然ボケセレブキャラのお約束だよねーと思ってノリと勢いで書き始めたところ、よくよく考えたら麗華お嬢様に同様の設定が付いていたことに気付いてキーボードを叩く手も止まった次第です。でもその時には既に殆ど出来上がっていたので最早知らんぷりでアップします。それと斉藤の習作と言っておきながらアレですが密かに自分内西園寺習作でした。ごめん斉藤。
きれいで格好良くて一生懸命で世間知らずでばかなのが自分の持っている西園寺のイメージらしいです。(今回最後二つしか反映してません)


あとこれ最初拍手に入れようとしてたんですがちょっと斉藤が可哀想な気がしたんで止めました。

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